1日生活をすると、髪には多くの汚れが付着しています。そのほとんどがお湯でしっかり洗うことで流れていきます。湯シャンという言葉を聞いたことがあると思います。
しかし、それだけでは落としきれない汚れもあります。汚れが溜まっていくと髪と頭皮のトラブルの原因になってしまいます。落としきれない汚れを落とすにはシャンプーの界面活性剤が必要なのです。
1.シャンプーで汚れが落ちる仕組み
髪や頭皮には汗などの「水に溶けやすい」汚れと、「水に溶けにくい」汚れが混在しており、ホコリや花粉、砂埃などの細かい粒子も付着しています。シャンプーに配合されている界面活性剤はこれらの汚れを効率よく洗い流すために配合されています。
2.界面とは
「界面」とは、気相、液相、固相のそれぞれ異なった相の間に生じる境界面のことです。気体と液体、液体と液体、液体と固体、固体と固体、固体と気体、といった5種類の界面があります。
一般に気体あるいは真空に接している液体や固体の「界面」を「表面」といいます。私たちの周りにはいたるところに「界面」があります。例えば、空気と皮膚です。これを言い換えると「気体」と「固体」ですから、空気と皮膚の間には「界面」があります。
お風呂に入ると水と皮膚の間に界面がありますし、手で物をつかんだ時にも皮膚とモノの間に界面ができます。つまり、界面がない方が少ないといえるでしょう。
3.界面活性剤の特徴
界面活性剤はその名前の通り「界面」を「活性」させるものです。気体と液体、液体と液体、液体と固体など、界面は様々なところにあります。皆さんが良く知っている「水と油」にも界面があります。
グラスに水と油を入れてよく観察してみてください。水と油の境目に薄い膜のようなものが見えると思います。それが「界面」です。その界面を「活性」=「混ざりやすくする」特徴を持つのが界面活性剤です。
4.界面活性剤の構造
界面活性剤は一つの分子に二つの性質を持つ独特な構造をもっています。一つは水に馴染みやすい「親水基」、もう一つは油に馴染みやすい「親油基」です。親水基は、水や水に似た物質に近づこうとする性質があり、親油基は、水を避けようとして油や油に似た物質に近づく性質があります。
5.界面活性剤の性質
界面活性剤にはさまざまな性質があります。まず、「界面に集まる」という性質があります。この性質によって界面の性質が変わり汚れを落とす作用が生まれます。その他にも「表面張力の低下」「乳化・可溶化作用」「再付着防止作用」「分散作用」などがあります。
・表面張力の低下
界面の性質の変化のひとつに、表面張力の低下があります。表面張力とは、簡単にいうと、「表面を縮める力」「表面積を最小にしようとする力」のことで、水分子どうしが引っ張り合うことで生まれます。
この表面張力が小さくなると、水滴があまり丸まらずに広がるので、髪と水が馴染みやすくなり、 汚れを落とすためには都合のよい状態になるのです。
・乳化・可溶化作用
皮脂などの油性の汚れを水に散らばらせて、混じり合った状態にする性質です。界面活性剤の親油基が油の粒子を取り囲み、油は非常に小さな粒子の状態になります。このとき、界面活性剤の親水基は水の側を向いているため、油と水の橋渡しの役目を果たし、両者はよくなじんで均一に混ざり合います。
・再付着防止作用
髪からはがれた皮脂などの油汚れがまた髪に戻らないようになる作用です。一度髪から汚れがはがれると、髪の表面にも界面活性剤の分子が取りつきます。この界面活性剤の分子同士は反発しお互いに近づこうとしないので、一度はがれた汚れが再び髪に取りつくのを防いでくれるのです。
・分散作用
あまりないことですが、例えばススなどの親油性の粉体(粒子)が髪などに付着すると水で流そうとしても水をはじき塊になってうまく落ちてくれません。ですが乳化作用と同様に界面活性剤が粉体を取り込み水の中に小さな粒子として分散させます。
まとめ
私たちに周りにはいたるところに界面があり、汚れと髪の間にも界面があります。その界面に界面活性剤が作用し、性質を変えることによって汚れを落とします。
界面活性剤は多くの種類があり、用途によって使い分けられています。シャンプーは髪と頭皮の汚れを落とすものですが、同じ汚れを落とすという目的で作られている洗濯用洗剤に使われている界面活性剤はシャンプーには使われていません。
一言で言うなら洗濯用洗剤に使われている界面活性剤はシャンプーに使うには強すぎるのです。各製造メーカーは使用する目的に合った界面活性剤を使って製品を作っています。
もちろんシャンプーもそうですが、やはり良い成分を使っているものはお値段が高くなってしまいます。もし高級シャンプーを試す機会があればタンパク系の界面活性剤を配合しているものを使ってください。汚れを落としながら髪のケアまでできる界面活性剤ですのでお勧めします。