5月は紫外線の量が多くなってきます。4月の疲れがドッと出てストレスが溜まる時期です。紫外線やストレスは髪にも悪影響を与えています。中には頭皮環境が悪くなり抜け毛が増えた、髪がいつもよりパサついていると感じる人もいることでしょう。
トリートメントや育毛剤など頭皮ケアやヘアケアに気を使い、健康で美しい髪を保とうとされていると思います。
ではみなさんは、髪についてどのくらい知っていますか?自分の髪と向き合う前に知っておきたい髪の基礎知識をご紹介します!
1.毛髪について
身体には3種類の毛があります。出産時の衝撃から身を守り、すぐに抜ける「胎毛」。腕など生える、細くて柔らかい「体毛」。そして、毛髪などの太くて硬い「終毛」です。
毛は毛包の毛乳頭が血管から送られてきたアミノ酸などを吸収し、毛母細胞が細胞分裂を繰り返して生えてきます。日本人の毛は全身で130万~150万本、そのうち毛髪は10万~12万本と言われています。
頭部に生える毛を「毛髪」「頭髪」「髪の毛」「髪」といい、1日に0.4mm程、1ヵ月では約1cm伸びていきます。1年間で約14cm、ヘアサイクルが長くて7年ほどなので、自然に抜け落ちるまで100cm程伸びます。個人差はありますが1日に50~100本は抜けています。
2.皮膚の構造
健康な髪を作るうえで重要になる頭皮。頭皮と顔の皮膚は同じ構造をしています。お顔のお手入れをするように頭皮にも少し気を使うと健康な髪が育ちやすい環境を作ることができます。
皮膚は表皮・真皮・皮下組織の3層からから構成されています。
表皮
:皮膚の最表面で平均0.2mmの薄い層。内側から「基底層(きていそう)」「有棘層(ゆうきょくそう)」「顆粒層(かりゅうそう)」「角質層(かくしつそう)」の4層でできています。
基底層で新しい細胞が作られ、分化を繰り返しながら徐々に表面に押し上げられ、最後は垢として剥離するターンオーバー(約45日周期)を繰り返しています。
真皮
:表皮の内側にあって皮膚組織の大部分を占めており、平均2mmの厚さがあります。真皮は「コラーゲン」という繊維状のタンパク質が主になっており約70%を占めています。
他に弾性繊維といわれる「エラスチン」という繊維状のタンパク質などがあり、その間を「ヒアルロン酸」などが水分を抱えながら満たしています。真皮には他にも血管やリンパ管、皮脂腺、汗腺などがあります。
皮下組織
:皮膚の3層構造の最も内側にある部分で、表皮と真皮を支えています。皮下組織は大部分が「皮下脂肪」で、そこに「動脈・静脈」が通っており皮膚組織に栄養を届けたり、老廃物を運び出したりしています。
皮下脂肪は熱を伝えにくいという性質から断熱・保温という役割があり、外部からの衝撃を和らげるクッションの働きや、エネルギーを蓄える役割もあります。
3.毛穴の構造
毛幹部
:毛髪の皮膚より上の部分です。
毛根部
:毛髪の皮膚の中にある見えない部分、表皮から真皮の下部まであります。
毛乳頭
:毛細血管から送られてきた栄養を取り込み、様々な成長シグナルと共に栄養を毛母細胞に送ります。
毛母細胞
:毛乳頭を包み込むような形をしており、毛乳頭から成長シグナルと栄養を受け取り、活発に細胞分裂・増殖活動を繰り返し、次々に細胞を押し上げ、毛髪が成長していきます。
バルジ領域
:2000年~2001年に発見された発毛に関係する部分です。「幹細胞」の一種、「毛包幹細胞」と「色素幹細胞」が存在しています。この2つの幹細胞が毛根に発毛の指令を出しています。
皮脂腺
:皮脂を分泌する器官です。皮脂を分泌し水分の蒸発を防いで、肌の潤いを守ります。
毛細血管
:栄養素を運んできます。ヘアサイクルにも深く係りがあります。
4.毛髪の構造
毛髪は、キューティクル(毛小皮)、コルテックス(毛皮質)、メデュラ(毛髄質)の3つの層からできています。海苔巻きのように、中心のメデュラを囲むようにコルテックスがあり、外側はキューティクルで包まれています。
キューティクル
:非常に薄い膜がうろこ状に4~10枚重なって表面を覆っています。キューティクとキューティクルの間には接着剤の役割をするCMCがあり、水の出入りのコントロールや、パーマ剤やヘアカラー剤の通り道になっています。
爪と同じケラチンからできているため硬く、毛髪内部を外の刺激から守る役割がありますが、摩擦や熱に弱いです。キューティクルが整っていれば指通りがなめらかで、毛髪につやを与えます。
コルテックス
:キューティクルの内側にあり、毛髪の85~90%を占めています。タンパク質で作られた円錐状の繊維(フィブリル)が束になっており、隙間には間充物質が入りこんでいます。
コルテックス細胞同士はCMCで接着されています。毛髪の太さや硬さはコルテックスに左右されます。メラニン色素もコルテックスにあるため、その種類と量によって髪の色が決まります。
メデュラ
:柔らかく線維化しない細胞が積み重なってできており、空気を含んでいるものや、途中で切れているものなど決まった形はなく様々あります。メデュラが存在しない毛髪もあり、機能についてもまだ解明されていないことが多い部分です。
CMC
:キューティクルやコルテックスを繋いでいる毛髪細胞膜複合体です。
水分を保ち、栄養分の流出を防ぐ役割があります。
間充物質
:フィブリルとフィブリルを接着するようにコルテックス細胞の約55~60%を締めます。メラニン色素や、水分を保持するNMF(ナチュラルモイスチャライジングファクター)を含んでいます。
5.ヘアサイクル
お肌のターンオーバーの様に毛髪の毛にもヘアサイクルと呼ばれるものがあります。一定期間成長した毛髪は、自然に抜け、また生えてくるのです。
成長期
:3年~6年。3段階に分かれます。毛髪全体の約90%が成長期にあたり、この時、毛細血管は14~16本毛乳頭に繋がっています。
早期成長期
:古い髪が毛根から離れると、毛母細胞が分裂をし、新しい髪を作りはじめます。
中期成長期
:新しい髪が成長し、古い髪を押し出そうとします。古い髪はシャンプーやブラッシングなどの刺激ですぐに抜け落ちます。
後期成長期
:古い髪が抜け落ち、新しい髪が太く長く成長する時期です。
退行期
:2~3週間。毛乳頭の働きが弱まり、毛根の角化が始まります。退行期の毛髪は全体の約1%程です。この時期に近づくにつれ毛細血管が少しずつ消滅していきます。
休止期
:3~4ヵ月。毛乳頭の活動が完全に停止します。全体の約10%程です。この時の毛細血管の数は4本程度になっています。
脱毛
:再び毛乳頭が活動をはじめ、新しい毛髪の成長によって古い毛髪が押し上げられ、自然に抜け落ちます。この時期から毛細血管が作り始められ、7本程度毛乳頭につながると新しい毛髪が作り始められます。
6.髪の毛と食事
健康な髪を育む上で食事は重要なことです。髪の毛は18種類のアミノ酸から構成されたケラチンが主成分です。
毛細血管から送られてきたアミノ酸などの栄養素を毛乳頭が取り込み、それを基に毛母細胞が分裂・増殖し髪の毛になります。この栄養素こそ、食事で摂取している栄養なのです。
髪の毛に良い食べ物として代表的なものに「牡蠣」や「海藻」、「納豆」などがあります。牡蠣は“海のミルク”と呼ばれ、アミノ酸を豊富に含んでいます。
海藻には亜鉛などのミネラルが多く含まれ、亜鉛はアミノ酸をケラチンに換える働きがあります。
納豆には男性ホルモンを抑制するイソフラボンや、タンパク質、ビタミンなどが含まれています。ほかにも、血液をサラサラにする効果があります。先ほどもお伝えしましたが、髪の毛は毛細血管から送られてきた栄養素を毛乳頭が取り込み、それを基に髪の毛が作られています。
しかし、牡蠣(髪の毛を構成するアミノ酸)や海藻(アミノ酸をケラチンに換える働き)、納豆(血液をサラサラにする)をたくさん食べたからといって健康な髪が生えてくるわけではありません。
東洋医学では「髪は血の余り(血余)」と言われています。東洋医学でいう“血”とは、循環器系や内分泌系の総称です。老廃物を除去し、栄養を行きわたらせ、体内環境を良くすることで、体を健康な状態に保ちます。
つまり、血が不足したり体内環境が悪くなると、栄養は髪にいかず血や体内環境を良くするために使われ、健康な髪を保つことが難しくなります。健康な体を保つことで、余った栄養が髪にいきわたり、健康な髪が育つのです。
そのためには、髪に良いとされるものだけをたべるのではなく、バランスよく栄養を取り、適度な運動を心がけ、健康な体を作ることが大切です。
7.髪は第二の腎臓
腎臓は血液をろ過して、必要なものを体に残し、余分なものを出す機能があります。腎臓のおかげで血液が綺麗になり、体中に栄養を行き渡らせ、体内環境を正常に保っています。
しかし、腎臓が正常に機能しなくなるとどうでしょう。老廃物がうまく排泄できなくなったったり、必要なものを尿と一緒に排泄してしまったりします。手足がむくんだり、立ち眩みしやすくなります。
髪も微量ですが腎臓と同じように老廃物を体外へ排出することができます。腎臓では排出しにくい重金属なども体外へ排出することができるのです。
髪から薬物の反応が出たと聞いたことはありませんか?髪を調べれば何を摂取したかわかるほど髪の毛からいろいろなものが排出されています。ミイラの髪を分析して当時の人々が何を食べていたか、死因は何かなどの調査も行われています。
髪は血余といわれるほど、最後に栄養を取り込みますが、腎臓が排出できなかった不純物も最後に髪から排出されるのです。
まとめ
健康な髪を作るには、健康な体が欠かせません。慢性的な寝不足や、偏食、ホルモンの乱れなどが長期間続くと頭皮に悪影響を与え、髪は艶を失い細くなり、うねりも出てくるかもしれません。
加齢による白髪や薄毛はしようがない面がありますが、薄毛予防、改善に関しては近年目覚ましい進歩を遂げています。そのうちに白髪の予防、改善ができる日も来ると思います。
髪も体の一部です、健康的な食事、適度な運動など健康に良いことをして髪に悪影響があることはまずありませんので、髪のためにも健康的な生活を心がけることをオススメします。